不動産を使った相続対策の中で、重要な税制がこの事業用資産の買換え特例(平成21年度税制改正で平成20年12月31日までの時限措置であった事業用資産の買換えの特例(個人21号・法人22号)が平成23年12月31日まで延長)です。
低収益で、有効活用できない(有効活用してはいけない)土地(駐車場・宅地並農地・遊休地)などを売却し、立地条件の良い高収益物件(賃貸マンション、事務所ビル等)などに組み換え、要件を満たせば、譲渡益について譲渡収入(買換金額)の80%までは課税が繰り延べされます。収収益性のUPだけでなく、小規模宅地の評価減効果等による相続税評価の大幅減額も可能であるため、相続対策として有効に活用することができます
但し、買換え資産の取得価格は、売却した資産の取得価額を基礎に計算するため、非常に少額になる場合がよくあるので注意が必要です。買い換えた建物で計上できる減価償却費が小さくなるため利益が増え所得税が増えることもありますので、状況に応じて(建物には買換を使わない等)工夫が必要です。
相続対策の重要なポイントである相続税評価額の圧縮(相続税の減額)と収入UPにこの特例は欠かせません。
大局的に見ると、今後益々立地条件の悪い土地(地方や都市部でも郊外の不便な地域)は、価格の下落が続きますので、所有不動産の価格が下がる前に、また不利な立地で有効活用するより、買換えにより立地を選んで買い換える方が、間違いなく相続税評価減と収益性のUPが可能です。
平成21年4月1日現在法令等(国税庁ホームページより転載)
個人が、事業の用に供している特定の地域内にある土地建物等を譲渡した場合に、一定期間内に特定の地域内にある土地建物等の特定の資産を取得し、 その取得の日から1年以内に買換資産を事業の用に供したときは、事業用資産の買換えの特例の適用を受けることができます。
この特例を受けますと、 売った金額より買い換えた金額の方が多いときは、売った金額に課税割合を掛けた額を収入金額として譲渡所得の計算を行います。
売った 金額より買い換えた金額の方が少ないときは、その差額と買い換えた金額に課税割合を掛けた額との合計額を収入金額として譲渡所得の計算を行います。
これらの場合の課税割合は20%です。
この特例を受けるには、次の要件すべてに当てはまることが必要です。
(1) 買換えのために売る資産(譲渡資産)と買う資産(買換資産)は、共に事業用のものに限られます。
(参考) 事業用の資産の範囲
(2) 譲渡資産と買換資産とが、一定の組合せに当てはまるものであることです。
この組合せの代表的なものとして、次のものがあります。
イ 東京都の23区、大阪市などの既成市街地等内にある事務所や事業所として使用されている建物又はその敷地用の土地で、その譲渡の日の属する年の1月1日において所有期間が10年を超えるものを譲渡して、既成市街地等でない 地域(国内に限ります。)にある事業用の土地や建物を取得する場合
(参考) 既成市街地等から郊外への買換えの具体例
ロ 譲渡の日の属する年の1月1日において所有期間が10年を超える国内にある事業用の土地等や建物を譲渡して、国内にある土地等、建物又は機械装置を取得する場合
(3) 買換資産が土地であるときは、取得する土地の面積が、原則として譲渡した土地の面積の5倍以内であることです。この5倍を超えると、 超える部分は特例の対象となりません。
なお、一定の農地への買換えの場合は10倍以内とされることがあります。
(4) 資産を譲渡した年か、その前年中、あるいは譲渡した年の翌年中に買換資産を取得することです。
なお、前年中に取得した 資産などを買換資産とするためには、取得した年の翌年3月15日までに「先行取得資産に係る買換えの特例の適用に関する届出書」を 税務署長に提出をしておくことが必要です。
また、売った翌年中に買換資産を取得する予定の場合には、確定申告書を提出する際に 取得する予定の買換資産についての取得予定年月日,取得価額の見積額及び買換資産が買換えの組み合わせのいずれかに該当するかの別 その他の明細を記載した書類(買換(代替)資産の明細書)を添付することが必要です。
(5) 事業用資産を取得した日から1年以内に事業に使うことです。なお、取得してから1年以内に事業に使用しなくなった場合は、原則として特例は受けられません。
(6) この特例を受けようとする資産については、重ねて他の特例(優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の 特例や優良賃貸住宅等の割増償却等)を適用することはできません。
(7) 土地等の譲渡については、原則として、譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超えていることです。なお、 平成10年1月1日から平成23年12月31日までの間にした土地等の譲渡については、この要件が停止されています。ただし、 (2)で説明した組み合わせの場合には、所有期間について、譲渡した年の1月1日において10年を超えていることが、個別の要件とされています。
(8) 譲渡資産の譲渡は、収用等、贈与、交換、出資によるもの及び代物弁済としての譲渡ではないこと、また、 買換資産の取得は、贈与又は交換によるもの、所有権移転外リース取引によるもの及び代物弁済によるものではないこと。
この特例の適用を受けた場合の譲渡所得の金額は、原則として次の算式によって計算します。
(1) 譲渡資産の譲渡価額と買換資産の取得価額が同額か、または、買換資産の取得価額の方が多い場合
イ 譲渡資産の譲渡価格×0.2=収入金額
ロ (譲渡資産の取得費+譲渡費用)×0.2=必要経費
ハ 収入金額−必要経費=課税される譲渡所得の金額
イ 譲渡資産の譲渡価額−買換資産の取得価額×0.8=収入金額
ロ (譲渡資産の取得費+譲渡費用)×(収入金額÷譲渡資産の譲渡価額)=必要経費
ハ 収入金額−必要経費=課税される譲渡所得の金額
この特例を受けるためには、次の書類を添えて確定申告をすることが必要です。
イ 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]
ロ 買換資産の登記事項証明書などその資産の取得を証する書類
ハ 譲渡資産及び買換資産が特例の適用要件とされる特定の地域内にあることを証する市区町村長等の証明書 など
(注) 買換資産を取得する見込みで、この特例の適用を受けた場合には、上記のロの登記事項証明書などは、買換資産を取得した日から4か月以内に提出しなければなりません。
買換資産を取得する見込みでこの特例の適用を受け申告した買換資産の「取得価額の見積額」より「実際の取得価額」の方が多かった場合には、 買換資産を取得した日から4か月以内に「更正の請求書」を提出して所得税の還付を受けることができます。
買換資産を取得する見込で、この特例の適用を受け申告した買換資産の 「取得価額の見積額」より「実際の取得価額」の方が少なかった場合には、買換資産の取得期間を経過する日から4か月以内に修正申告をし、差額の所得税を納付しなければなりません。
事業用の資産の範囲
既成市街地等から郊外への買換えの具体例
親族の事業の用に使わせている資産を買い換えたとき
売った金額より少ない金額で事業用の資産を買い換えたとき
売った金額以上の金額で事業用の資産を買い換えたとき
譲渡した年に買換えができなかったとき
期限までに買換資産を買えなかったとき
事業用資産の買換えの特例を受けて買換えた資産の取得価額とされる金額の計算
既成市街地等の範囲