「事業用資産の買い換え特例」を利用しよう
なかなか有効な不動産活用方法が見つからない場合、打つべき手段について紹介していきます。
活用がむずかしい不動産は
@駅から遠い(徒歩10分以上)
A土地に面する道路が狭い(4m以下)
B地形が悪い(いびつな形)
などの欠点が重なり、使い勝手が悪い土地であるケースが多くなっています。
活用がむずかしい土地で無理して事業を続けても、先が見えているし、失敗する可能性が大きいのが現実でしょう。そのときは、駅に近い、道路が広い、地形がいいといった条件を満たし、有効活用ができる土地と買い換える方法を検討することです。
不動産を買い換えると、不動産売却で得た利益に対して譲渡税がかかり、手元資金が少なくなります。このため、収益性が高い不動産が手に入りにくくなっていました。しかし、いまが事業用不動産を買い換える最後のチャンスです。
というのは「事業用資産の買い換え特例」があるからです。この税制上の特例は、収益性が低い土地を収益性が高い土地に組み替えるために有効な手段として使えます。ただし、景気対策、土地の流動化を図る目的で設けられた特例制度で、2003年12月31日までの時限立法になっています。不動産の買い換え計画から実行までに時間がかかりますから、できるだけ買い換えの行動は早くとることをお勧めします。
何と譲渡所得の80%が繰り延べに
事業用資産の買い換え特例は、買い換えによって発生する譲渡所得の80%が繰り延べ(その時点では課税を免除、次に売却したときに、繰り延べされた譲渡益が課税対象になる)されるもので、買い換え時に生じる譲渡益に対する実質税率は5.2%になります。
特例が適用されないときは、100の譲渡所得に対して(保有期間5年超として)26%の譲渡税が課税され、26の税額を納めなければなりません。が、この特例が適用されると、譲渡所得の80%が繰り延べされるため、残る20の譲渡所得に対して26%課税されるので、実質的な税率は5.2%になるのです。手元に残る現金で考えれば、特例が適用されなければ74ですが。特例によって95近くが残ります。この差によって、新しく購入できる物件の条件が大きく違ってきます。
この法律が適用される譲渡地は、10年を超えて事業を営んでいる不動産に限られます。遊ばせている土地は対象になりません。事業用という意味は、その土地で工場や物品の販売、事務所を構えているほか、農地でもいいし、駐車場、資産置き場などの貸し地、アパートやマンションなど貸家建付地なども対象になります。買い換える不動産は、事業用でなくとも投資用不動産でもかまいません。
ポイントになるのは、売却、購入とも地域を問わないことです。郊外の事業用不動産を売却して都心の不動産を買い換えても、同じ郊外の不動産に買い換えても適用されます。買い換えた不動産が小規模宅地による評価減の適用が有効に受けられれば、相続税対策にもなります。
買い換え特例のメリットを比較してみる
ここに200坪の農地があります。市外化地域内にあるため坪単価は100万円で、土地の時価は2億円です。この土地のいろいろな活用法と、時価に対する収入から(表面)利回りを計算してみます。
まず、駐車場です。車1台に必要なスペースは6坪とされますから、200坪の広さでは、33台が駐車できます。月の駐車料金を1万円とすれと年間収入は396万円になり、時価2億円に対する利回りは2.0%です。
次に、建物(マンション)を建てて貸すことを考えます。容積率が100%で、坪当たりの建築コストを50万円とすると建築費は1億円で、土地と合わせた時価は3億円です。13坪の部屋が13戸できたとして、年間家賃収入は1216万円(坪当たり賃料=月6000円)になり、利回りは、4.0%です。
そして、買い換え特例を使った資産の組み替えです。更地を2億円で売却して、都心のビルを3億円で購入することにします。売却費用や譲渡益課税を支払うと、手元資金が1億8400万円残り、不足する1億1600万円を金融機関から借り入れます。ビルの家賃収入は年間1800万円で、時価3億円に対する利回りは6.0%になります。金融機関への返済や管理費など諸経費を差し引くと1500万円が収入になります。このケースでは、買い換え特例を利用した資産の組み替えが一番利回りが高いという結論になります。ただし、マンションの場合も、入室率や賃料を低めに考えて計算してみることも必要です。
事業用資産買い換え特例を応用した例
郊外の収益性が低い資産を収益性が高い資産に組み替えることを目的に、15年間、駐車場にしていた土地を5億円で売却、都心の新築ビルと土地を合計4億3000万円で購入します。
駐車場の売却とビルの購入によって生じた譲渡益に対する課税額は、買い換え特例を適用することで約4000万円になります(特例が適用されないときは、約1億2300万円)。売却や取得に関連した諸経費が約5000万円かかり、手元に残る現金は4億1000万円です。
買い換えた都心のビルの物件価格は4億3000万円ですが、入居者から保証金と敷金の合計が2000万円あり、必要資金は4億1000万円に抑えることができました。ちょうど手元資金と同額になったので、まったく新規の負担なしに資産を買い換えることができました。
駐車場のときに年間税引前収支は750万円で利回りは1.5%でしたが、ビルからの年間賃貸収支は2240万円になり、投資額4億3000万円に対する利回りも5%以上になります。しかも、相続税対策の効果も生まれました。駐車場のままだと更地のため、相続税評価額が5億円で相続税額は2億円になっていました。賃貸ビルに買い換えたことで不動産が貸家建付地になり、評価額が2億4000万円で税額は9600万円と半分になります。