相続税の非課税限度枠は、「5000万円+1000万円×法定相続人の人数」です。当然法定相続人の数が増えると非課税限度額も多くなります。生命保険、退職金の非課税枠についても同様です。
法定相続人が増えると、適用される税率が低くなるという効果もありますので、相続税対策上は、法定相続人を多くした方が、当然有利になります。
過去、そうした節税目的としての養子縁組が多く見られたので、それに対抗するため、税制改正が行われ、現行の税法では、法定相続人の数に含める養子の数を、実子がある場合には1人、実子のない場合には2人に制限しています(民法上は、養子縁組は何人でも可能です)。
養子縁組による効果は従来ほどではなくなりましたが、納税額が減少することにはかわりありませんので、相続税対策としては有効です。なお、2003年の税制改正で、養子縁組をした孫は、2割加算の対象となりましたが、孫を養子にすると、子供をとばして孫に相続させることができ、本来、相続税が2回かかるところを、1回で済ませることができます。
養子縁組については、民法や通達等で下記のようなことがいろいろ定められています。
・ 未成年者は養親にはなれない(未成年者でも既婚者は成年者とみなされる)
・ 年長者を養子とすることはできない
・ 配偶者のある者が、未成年者を養子とするには配偶者とともにしなければならない
・ 養子となる者が15歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、縁組の承諾をすることができる
・ 配偶者のあるものが縁組みするには、その配偶者の同意を得なければならない
・ 未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない
・ 後見人が被後見人を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない
・ 当事者間に縁組みをする意思の合致があること
・ 自分の嫡出子(ちゃくしゅつし)または養子を養子とすることはできない
養子縁組は、市町村役場に「養子縁組届」を届け出て行い、養子になった者は、民法上縁組の日から養親の嫡出子として身分を取得し、実子と全く差がない養親の相続権をもつことになります。
養親の相続権を持ったからと言って、実親の相続権はなくなりません。養子は養親と実親との両方の相続権を持つことになります。この養子の相続権は、養子が養親と別居しても、養子が結婚して姓が変わっても何ら影響を受けることはありません。但し、養子を法定相続人に含めることが、「相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる」と、養子は基礎控除額算定の際に算入される法定相続人としては認められませんので、「相続税額を軽減するためだけの目的で養子縁組した」とみなされないよう、養子縁組した理由を説明できるようにしておく必要があります。
1. 税率の適用区分が低くなる
・ 法定取得財産が少なくなると適用税率も50%/40%/20%/15%/10%と低くなる
2. 基礎控除額が増える
・ 相続税の課税価格から差し引く基礎控除額は、「5000万円+1000万円×法定相続人数」とされている
3. 生命保険金の非課税枠が増える
・ 生命保険金は、「500万円×法定相続人数」が非課税とされている
4. 死亡退職金の非課税枠が増える
・ 死亡退職金は、「500万円×法定相続人数」が非課税とされている
※「相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる」と法定相続人と認められませんので、養子縁組した理由を説明できるようにしておく必要があります。
ケース | 養子の数 |
被相続人に実子がある場合 | 1人 |
被相続人に実子がない場合 | 2人 |
税負担を不当に減少させる目的の養子と認められる場合 | 0人 |
民法上の特別養子配偶者の連れ子養子 | 無制限(実子とみなす) |
※ 上記において代襲相続人(子が先に死亡した場合の孫等)は実子と見なされる。
相法12条 相続税の非課税財産
相法15条 遺産に係る基礎控除
相法16条 相続税の総額
相法63条 相続人の数に算入される養子の数の否認
民法817条 2-11 特別養子