この相続時精算課税制度は、いくら贈与したとしても相続時に精算されますので、あまり相続税対策としての効果はないといわれています。しかし、贈与する財産の選択により、相続税対策としての大きな効果が期待できることもあります。
相続税の課税対象とならない人にとって、生前贈与が簡単になり、相続税対策としてではなく、生前に感謝の気持ちを形にしたり、子どもの夢をかなえる手助けをしてやりたい親にとっては、この新制度を選択すれば、税金の負担に悩まされずに、いろいろなことができるようになります。
※ ただし、一度この制度を選ぶと変更することができないので、どうすべきか非常に判断がむずかしいところです
「相続時精算課税制度」は、生前贈与により財産を取得する際、一定の要件を満たす者がこの制度を選択した場合は、贈与時の贈与税が軽減され相続時に相続税で精算する制度です。
従来の贈与税は、相続税の課税を免れるための生前贈与を防ぐという趣旨から、高い税率が課されていました。このため高齢者から次世代への財産の承継は、相続を通じて行われるのが一般的です。
しかし、我が国の高齢化に伴い次世代への資産の移転が進まず、資産の有効活用という観点から望ましくはありませんでした。このような状況のもと、生前贈与と相続との財産承継時の選択に関して税制の中立性を確保すべく今回の改正で贈与税と相続税の一体化課税方式が導入されました。
平成15年1月1日以後に財産の贈与を受けた人は、贈与をした人ごとに相続時精算課税制度を選択することができます。
1.要件
・贈与した人→ 65歳以上の親
・贈与を受けた人→20歳以上の子である推定相続人
2.相続時精算課税制度を選択する場合
・贈与財産が2500万円を限度として贈与税が非課税となります(非課税枠は2500万円を限度として累積的に複数年にわたって使用可能、非課税枠を超える部分については税率20%で課税)。
・精算課税制度を選択する受贈者は、贈与をうけた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に相続時精算課税制度を選択する旨の「届出書」を「贈与税の申告書」とともに提出しなければなりません。
・贈与者がなくなった時(相続発生時)の相続税の計算上、相続財産の価額に相続時精算課税制度を適用した贈与財産の価額を加算して相続税を計算します。
3.相続時精算課税制度を選択しない場合(暦年課税)
従来どおり、贈与税は毎年1月1日から12月31日までに受贈した財産に課税されます。基礎控除額は110万円で税率は下表のとおりです。贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に申告します。
基礎控除後の課税価額 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | 0円 |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1000万円以下 | 40% | 125万円 |
1000万円超 | 50% | 225万円 |
ローン返済が完了した古貸家は、必要経費が少なく利益が多く出ます。生前の贈与により、子に所得が移転し、親の所得税の軽減が計られるとともに親の財産の増加も抑えられ、子が払う納税資金の原資となりますので、相続税対策にもなります。
諸方策で自社株の評価を下げ、自社株を生前に贈与します。後継者を名実ともにオーナーにすることにより、事業の承継もスムースに行えます。 相続時精算は贈与財産を贈与時の時価で相続財産に取り込むので、将来株価が増加すれば、相続税の節税対策にもなります。
財産的弱者へは生活補助として早期に財産移転が可能となり、財産を有効に使うこともできます。又、先妻の子、認知された非嫡出子等は、遺言書があっても財産分けでもめることが多いので、もめないように生前に自分の意思でそれなりの贈与をし、遺留分の放棄をしてもらった上、遺言書を書くことにより争いが防ぐことができます。
子供に住宅資金を3500万円まで無税で贈与します。又、学資負担の大きい世代の子供へは、住宅ローンの肩代わり資金として2500万円まで無税で贈与してあげることにより、子供の生活は大いに助けられ感謝されます。
住宅資金贈与は、3500万円まで無税で贈与できますが、新築した住宅を贈与しますと資金を贈与するよりも大きな相続税の節税効果が期待できます。すなわち、取得価額4000万円の家屋の贈与税評価は2500万円程度ですので、無税枠2500万円の贈与で4000万円の財産を贈与したことになります。ただし、居住用不動産を取得した直後に贈与すると不動産の贈与ではなく、その不動産を取得する金銭の贈与とみなされるおそれがあるため、取得年の贈与は避けた方が無難です。
平成15年1月1日から平成19年12月31日までの間に20歳以上である子が親から自己の居住の用に供する一定の家屋を取得する資金又は自己の居住の用に供する家屋の一定の増改築のための資金(住宅取得等資金といいます)の贈与を受け、その資金を贈与を受けた年の翌年3月15日までに一定の家屋の取得又は一定の増改築に充てて、その家屋を同日までに居住の用に供するか又は同日後遅滞なく居住の用に供した場合に限り、これらの資金の贈与については贈与者である親が65歳未満であっても相続時精算課税を選択することができます。
「一定の家屋」とは、次の要件を満たす日本国内にある家屋をいいます。なお、居住の用に供する家屋が2以上ある場合には、その者が主として居住の用に供すると認められる1.の家屋に限ります。
1. 家屋の登記簿上の床面積(区分所有の場合には、その区分所有する部分の床面積)が50平方メートル以上であること。
2. 購入する家屋が中古の場合は、家屋の構造によって次のような制限があります。
a. マンション等の耐火建築物の場合は、その家屋の取得の日以前25年以内に建築されたものであること
b. 耐火建築物以外の建物の場合は、その家屋の取得の日以前20年以内に建築されものであること
3. 床面積の2分の1以上に相当する部分が専ら居住の用に供されるものであること。
「一定の増改築」とは、その者が所有し、居住の用に供している家屋について日本国内において行われる増築、改築、大規模の修繕、大規模の模様替その他の工事のうち一定のもので次の要件を満たすものをいいます。
1. 増改築等の工事に要した費用が100万円以上であること。なお居住用部分の工事費が全体の工事費の2分の1以上でなければなりません。
2. 増改築等後の家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が専ら居住の用に供されること。
3. 改築等後の家屋の床面積(区分所有の場合には、その区分所有する部分の床面積)が50平方メートル以上であること。
この特例の適用を受けるためには、贈与税の期限内申告書にこの特例を受ける旨を記載するとともに、相続時精算課税選択届出書、住民票の写し、登記簿謄(抄)本(登記事項証明書)など一定の書類を添付しなければなりません。
平成15年1月1日から平成19年12月31日までの間に20歳以上である子が親から住宅取得等資金の贈与を受け、その資金を贈与を受けた年の翌年3月15日までに上記(相続時精算課税選択の特例)の2及び3に記載した一定の家屋の取得又は一定の増改築に充てて、その家屋を同日までに居住の用に供するか又は同日後遅滞なく居住の用に供した場合に限り、これらの資金の贈与については2500万円の特別控除額のほかに1000万円の住宅資金特別控除額を控除することができます。
この特例の適用を受けるためには、贈与税の期限内申告書にこの特例を受ける旨を記載するとともに、相続時精算課税選択届出書、住民票の写し、登記簿謄(抄)本(登記事項証明書)など一定の書類を添付しなければなりません。
ただし、平成15年1月1日以後に贈与により取得した住宅取得資金等について、「5分5乗方式」の住宅取得資金等の贈与の特例の適用を受けた人は、その贈与を受けた日の属する年の翌年以後4年間は、その贈与に係る贈与者からの贈与について、相続時精算課税を選択することはできません。
しかし、平成14年12月31日までに「5分5乗方式」の住宅取得資金等の贈与の特例の適用を受けた人は、同一の贈与者からの贈与であったとしても、平成15年1月1日以後その者から贈与により取得した財産に係る贈与税について相続時精算課税を選択することができます。