相続に対する節税対策の1つの方法に基礎控除を利用した生前贈与があります。生前贈与を利用する事で、自分から次の世代、その次の世代に資産を移転し、相続時における資産の絶対量を減らすことができます。
相続税は、死亡した人の財産にかかる税金ですから、財産をできるだけ少なくすれば相続税は少なくてすみます。ただし、この贈与にも高い税率の贈与税がかかりますので、相続と贈与のどちらが有利か検討のうえ、対策を講じていかなくてはなりません。
贈与税には、年間110万円の基礎控除額があり、1年間に110万円までの贈与であれば無税になります。110万円というのは一見少なく思えるかもしれませんが、この基礎控除額をフル活用すれば節税額は何千万になることもあります。
(もらった財産の金額−基礎控除額(年110万円))×税率−控除額=贈与税額
※ もらった財産の金額の評価は、時価(財産の評価方法は相続税の評価方法と同じ)です。
※ 贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額から基礎控除110万円を差し引いた金額に税率を掛けた金額が税額となり、翌年3月15日が申告期限です。
基礎控除後の金額 | 税 率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | 0円 |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1000万円以下 | 40% | 125万円 |
1000万円超 | 50% | 225万円 |
贈与財産の価額−基礎控除額=基礎控除後の課税価格
1,500万円−110万円=1,390万円
基礎控除後の課税価格×税率−控除額=贈与税額
1,390万円×50%−225万円=470万円
1. 保険金の受取人以外の人が保険料の負担をしていた生命保険金や損害保険金
2. 委託者以外の人が受益者である信託受益権
3. 著しく低い価格で売却を受けた財産
4. 連帯債務者が自分の負担するべき割合を超えて債務を弁済した金額
5. 債務の免除を受けた金額
6. 同族会社に対する財産の無償提供等で株式の価値が増加したケースとか、増資による新株引受権を有利な条件で引き受けをしたケース
7. 対価を払わずに取得した部分の財産(共有取得等)
1.扶養義務者の相互での生活費、教育費に充てるための贈与財産で通常必要と認められるもの。
2.社交上必要と認められる香典、贈答、お見舞
3.特別障害者に対する扶養信託契約に基づく財産で、6,000万円以内の金額
4.候補者が選挙運動のために寄付を受けた一定の金品
5.心身や資産に対する障害賠償として受けた慰謝料や見舞金(所得税法の規定による)
6.離婚による財産分与や慰謝料を受けた場合で、正当なもの。(ただし財産分与等した相手方は所得税がかかることがあります。)
7.会社(法人)から受けた贈与財産(ただし、一時所得として所得税がかかります)など。
1.本人の意思で財産を移転できます。あげたい財産をあげたい人に確実に渡せます。
2.孫への贈与は、相続を1回分パスできることになり、相続税の課税を1回減らすことができます。
3.贈与した資産はその後相続税評価額が上昇しても、その上昇額が相続財産には影響しません。
贈与を行う場合、ある程度年数をかける必要があります。下表のように全額を1度に贈与するのと分割するのとでは、大幅に納税額が異なります。
3000万円の財産を下記の年数で均等に分割贈与した場合、贈与税総額は以下の通りとなります。
全額を1年で贈与したとき | 1220万円 |
全額を3年にわたって分割贈与したとき | 693万円 |
全額を5年にわたって分割贈与したとき | 410万円 |
全額を10年にわたって分割贈与したとき | 190万円 |
実際には、毎年の贈与金額が一定であると「定額贈与」とみなされ、贈与がなかったものとされる場合があるので、少し金額を変えるなどの注意が必要です。
基本的に「贈与」とは、財産を贈与しようとする者(贈与者)が「あげましょう」財産を受け取る者(受贈者)が「もらいます」といったはっきりとした意思表示の合致によって成立する契約です。いつ、誰に贈与したかを、確実な証拠で説明できるようにしておくことです。
預貯金などは、名義を変更しただけでは、必ずしも贈与したとは認められにくく、その証拠の提出を求められることがあります。贈与税の確定申告をすることや贈与契約書を作成することにより、贈与者と受贈者の間で意思表示の合致があったことを証明することができます。
預金を贈与した場合、贈与をした人自身が通帳と印鑑を保管して預金を管理していると、贈与を受けた人はもらった預金をなかなか使用収益できません。これでは、その預金は実質的に贈与が行なわれていないと考えられても仕方ありません。そうならないためにも、通帳と印鑑は受贈者がしっかりと管理して、贈与を受けた預金を使うなど、使用収益することが必要です。