まず遺言による指定があればこれに従うことになります。こうした遺言がない場合には、相続人全員で話し合って遺産分割を決めます。しかし、多数決というわけにはいかず、相続人の一人でも欠けた遺産分割は無効となります。
遺産分割をする際に、共同相続人の全員の協議により、共同相続人の自由な意思に基づいて分割を決定した場合には、法定相続分に従わなくても有効であるとされています。遺産分割について合意がなされたときは「遺産分割協議書」を作成します。
分割協議は「遺産に属する物や権利の種類と性質、または各相続人の年齢・職業などの一切の事情を考慮するよう」と民法で定めています。遺言もなく、相続人が複数いる場合、相続財産は共同相続人全員の法定相続分に応じた共有になっています。これでは、相続人が相続財産を自由に使用したり処分することができません。
自由に使用し処分するためには、相続財産を具体的に分割し、各相続人の財産にしなければなりません。つまり、相続人の間で協議して分割を決めることになります。
一般に未成年者については、親権者(親権者がいなければ後見人)が法定代理人として、未成年者の法律行為や財産管理を行います。しかし、遺産分割の場合、未成年者と法定代理人の利益が相反する楊合は、法定代理人が未成年者の代理をすることができず、未成年者の特別代理人の選任が必要となります。
遺産分割は利害を伴うものですから、利益の相反する者(たとえば、未成年者とその親が共に相続人になっているとき)が代理人になって、自分の分と未成年者の子の両方の取分の取り決めをすること(双方代理)は許されないのです。
1. 親権者(または後見人)も共同相続人である
2. 複数の未成年者がいて親権者(または後見人)が共通
これらの場合、親権者(または後見人)は、利益が相反する未成年者のため、家庭裁判所に特別代理人の選任を請求しなければなりません。各自の特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立て、特別代理人によって遺産分割の手続きをすることになります。
遺産分割協議は、相続人全員の意思の合致により成立します。一旦成立すれば効力が生じ、無効・取消の原因(詐欺や強迫による場合など)、あるいは全員の合意がない限り、やり直しを主張することはできません。各相続人は、その遺産分割協議の内容に則して、具体的に何を相続するかが決まり、不動産など名義変更が必要なものについては、その変更手続きをします。
遺産分割協議が成立すると、その後に協議内容の不履行があっても遺産分割協議の解除は認められないというのが判例です。成立した協議の内容に従って、調停や訴訟で実現を求めることになります。協議から漏れていた遺産があった場合も、その漏れた遺産について別の協議をすることになり、従来の協議を全部やり直すことにはなりません。ただし、漏れた遺産が重要なものであれば、錯誤による分割協議として無効を主張することができる場合もあり、無効となれば、分割協議をやり直すことになります。