相続対策の中で一番重要といわれている、円満な財産分割に一番効果的といわれている対策は「遺言」です。特に不動産などの評価や分割が難しい資産がある場合には、その重要性が増します。
遺言(ユイゴンまたはイゴン)とは、人の生前における最終的な意思表示を尊重し、遺言者の死後にその意思を実現させる為に制度化されたものです。つまり、遺言によって遺言者が生前に自分の財産を自由に処分できることを法律は認めています。
一方で、遺言に厳格な要件を定めて(一定の方式による書面にする等)それによらない遺言は無効としています。なお、遺言の内容は、遺言者の死亡によって効力が生じます。
普通方式 | 自筆証書遺言 | 遺言者がその全文、日付および氏名を自書し、押印して作成する遺言です。 |
公正証書遺言 | 証人2人以上の立会いのもとに、遺言者が遺言の内容を公証人に口授し、公証人がこれを筆記し、遺言者および証人に読み聞かせてする遺言です。 | |
秘密証書遺言 | 遺言者が、作成した遺言書に署名・押印し、これを封筒に入れて封印し、その封書に証人2人以上および公証人が署名・押印してする遺言です。 |
|
特別方式 | 臨終遺言など、危急の場合にのみ認められる方式です。 |
遺言による遺産分割の指定は法定相続分に優先する
遺産を分割する場合、遺言書がない時には法定相続分によることになりますが、遺言書がある場合には、書いてある内容通りに分割します。
これは、遺言書に法定相続人となっていない第三者へ遺産を贈与するのも有効であることを意味しています。そのため、遺言による分割を行うと、相続人の中には法定相続分よりも少ない遺産しか相続できないという場合もあるということになります。
遺言執行者がいる場合は遺言執行者に従う
遺言書の内容を実行することを「遺言の執行」といいます。この遺言の執行を行うのが「遺言執行者」です。遺言執行者には、特別な資格等は必要ありません。遺言書で指定されていればその人が就任します。指定された人がいないときや、指定された人が辞退した場合には家庭裁判所に選任してもらうことになります。
遺言執行者は、法的な権限を持つことになります。遺言書によるこの認知の届出や、相続人の廃除及び取り消しの請求は遺言執行者でなければできません。
遺言書で分割がなされていた場合でも、法律上法定相続人には、それぞれ法定相続分の1/2の遺留分が認められており、相続分がそれ以下になってしまうときには、「遺留分減殺請求」をすることができます。
本来、財産の処分は自己の意思に委ねられています。遺産をどのように処分することも本人の自由であるはずです。しかし、同居の親族などは、その遺産を頼りに生活している場合も多い訳です。ですから、法は遺留分減殺請求を認めて、本人の意思を尊重しながらもそのような親族をも保護しようとしているのです。
しかし、この遺留分を侵害するような内容の遺言書を書いたとしてもそれが無効になるということはありません。これは、あくまで、遺留分を侵害された法定相続人が持っている権利であって必ず行使しなければならないものではないからです。
遺留分減殺請求は家庭裁判所に申し立てる必要はありません。遺留分を侵害した人に、直接遺留分減殺の意思表示をすることができます。相手方がそれに応じない場合には家庭裁判所の調停によることになります。
遺留分減殺請求は、相続の開始を知った時から1年以内に行わなければなりません(民法1042条)。なお、被相続人の兄弟姉妹には遺留分は認められていません。
遺 産:1億円
相続人:配偶者と子二人
遺言内容:資産1億円をすべて第三者に遺贈する
この場合、遺言がない場合の法定相続分は、
配偶者:5000万円
子A:2500万円
子B:2500万円
遺留分は
配偶者:2500万円(法定相続分の5000万円の1/2)
子A:1250万円(法定相続分の2500万円の1/2)
子B:1250万円(法定相続分の2500万円の1/2)
遺言によって第三者に遺産の全てが行くことになると、配偶者、子ともに相続できる資産は0円となり、配偶者の2500万円、子供の1250万円の遺留分を侵害していることになり、この場合には、この第三者に対して遺留分減殺請求をすることができます
※ 「遺留分減殺請求」は消滅時効の関係上内容証明郵便によるほうが安全です。