地主さんにとって、貸宅地は有効活用できていない(できない)土地の代表と言っても良いのではないでしょうか。また相続が発生したら、貸宅地の相続税は収益性の割りに高額な課税をされるのに、借地人さんが居るために適正な価格で売却も出来ず、延納しても地代が安いので利子税の支払にも困る、さらに物納するにも土地の境界線の確定、契約書の整備等の作業が難しいといった、大変困った事態になることが予想されます。
自分の土地であるにもかかわらず、資産性、換金性が低く、収益性も低い為、貸宅地はできるだけ整理していく事を心がけましょう。
貸宅地の整理には、「生前における貸宅地の整理」と、万一の場合の「相続発生時における貸宅地の整理」があります。
生前における貸宅地の整理は、貸地借地関係の過去の事情を知悉している被相続人が存命中に行うことになります。それによって、底地の売却・交換、借地権の買い戻し、将来の物納に備えての土地の境界の確定などを余裕を持ってできるとともに、土地の境界問題など複雑な隣接地との関係を次代に残さないという利点があり、相続人さんにも喜ばれる処理方法です。
1.貸宅地の契約関係、現況等について詳しく調べる事ができます。
2.地主さん一人の判断で売却・交換・買取等ができるため、処理が迅速にできます。
3.整理によって得た資金を再投資することによって、資産の組み替え、有効活用を図ることができます。
4.時間的な余裕があるので、不利な整理をしなくてもすみます。
5.相続対策並びに、相続税対策ができます。
6.売却後の資金で、相続税の納税資金を準備できます。
7.次代に煩わしい問題を残さずにすみます。
8.物納適格化作業を行うことができます。
1.貸宅地(底地)売却により、税金の支払いが一部発生します。
2.相続税改正リスクが発生する可能性があります。
3.整理のための一時的費用がかかります。
相続発生時における貸宅地整理は、地主さんの死去に伴って、急いで相続税支払いのための資金作りをしたり、物納を準備したりするために、その時点での最善策を講じたとしても、足元を見られて処理がスムーズにできない危険性がある等、概してメリットよりもデメリットの方が多いのではないでしょうか。
1.物納するか売却するかについて、評価と時価を比較して決めることができます。
2.売却条件等についての決断が早くなります。
3.売却の場合、相続税取得費加算の特例の適用を受けることができます。
4.物納の場合、譲渡所得税がかかりません。
1.相続税納税資金確保のためだけの整理となり、後々に問題が残り易い。
2.時間的な余裕がないため無理な整理になりやすい。
3.底地売却時に買主に足元を見られやすい。
4.物納適格条件整備の際、賃借人に足元を見られて物納不可になる場合があります。
5.隣地承諾印を取るために、隣地の無理難題を呑むざるを得ない場合が起こります。
6.遺産分割協議が整わないと、各種特例が受けられない事態になります。
1.地主が借地人に底地を売却する。
2.地主が借地人から借地権を買い取る。
「積算法」による値決め法
時価に底地割合を乗じ、個別事情による値引きを差し引く方法です。
公式化しますと、下記の通りです。
時価×底地割合×(1−値引率)=底地価格
3. 地主の底地と借地人の借地権を、一定の割合で等価交換する。
交換するための条件
a.当事者双方が1年以上保有していたものであること。
b.交換のために取得したものではないこと。
c.交換後も従前の用途に供すること。
d.交換差金が支払われる場合は、高い方の20%までであること。
※この等価交換を税務申告することによって、譲渡が無かったものとみなされて、課税の繰り延べができ税金がかかりません。もっとも、この整理法を生前に行っておけば、相続税の納税対策上特に有利です。物納ができます。また、物納より売却換金して金銭納付する方が有利であれば、それも選択できます。
4.地主は底地を、借地人は借地権を、共同売却して換金する。
5.地主の底地と借地人が別に持っている更地所有権とを、等価交換する。
6.地主の持っている他の更地と、借地人の借地権を交換する。
7.地主と借地人が協力して等価交換マンションを建設し、各権利者分の専有面積を取得する。
ディベロッパーが等価交換手法によりマンションを建設し、完成後地主さんは底地分、借地人は借地権分のマンション専有床を貰います。一定の条件を整えれば、地権者には税金はかかりません。
8.底地買い業者に貸宅地を一括して売却する。
借地人に売却することもできない、交換もできない等どうにもできない土地を整理する方法としては大変効果的な方法ですが、デメリットとして売値が安い(更地価格の2割前後)ことと、一部に悪徳買い取り業者がいますので、それに引っかからないように注意する必要があります。 この方法が有効なのは、地主さんの相続がまじかに迫っているようなときです。万一貸宅地を大量に保有したまま相続が発生すると、多額の相続税が発生してしまいます。 そんな状態では、借地人に足元を見られて底地にかかる相続税以下しか換金できないかも知れません。借地人にお金がないので買ってもらえないかもしれません。 また、物納するとしても、万一物納が却下されてしまうと、最悪の場合「相続税納税破産」を招きかねません。 こうしたことを避けるために、生前に貸宅地を整理することは非常に重要な相続対策なのですが、他の底地整理法では、相続がまじかに迫っている時は間に合いません。
9.将来の“物納”を準備しておく。
地主さんは一般的に、生前での貸宅地の売却をしたがりません。それ故に、生前に将来の物納のために条件整備をしておきます。
貸宅地物納適格主要条件
a.地代を周辺相場の70%以上にすること。
b.隣接地の境界確認書を作成しておくこと。
c.貸宅地の境界確認書を作成しておくこと。
d.借地人からの保証金・預り金がないこと。
e.地主に特別不利な契約内容がないこと。
f.抵当権の設定及び仮登記等がないこと。
g.係争中のものではないこと。