『相続対策の新常識』平成28年度税制改正編として、今年の改正内容部分について解説します。平成28年度の税制改正と近年の税制改正をまとめたものですが、『まさかに備える』というタイトルから連想できるとおり、平成27年度末時点で1,167兆円にも膨れ上がると予想されている我が国の財政状況について触れています。
平成28年度税制改正にあたり、安倍首相はアベノミクスの第2ステージとして「新・三本の矢の成長戦略」のもと、財政を圧迫する社会保障費の増大の原因となっている少子高齢化に歯止めをかけ、50年後も人口1億人の維持を目指すとしています。そして、生まれ始めた経済の「好循環」を確実なものとするために、成長志向の法人税改革をさらに推進するとともに、制度改正を通じた課税ベースの拡大等により財源をしっかり確保するとしています。また、「安心につながる社会保障」を実現するために「社会保障と税の一体改革」を確実に実施することが最重要課題であり、その一環として消費税率10%への引き上げを平成29年4月に実施し、その際、低所得者への配慮として軽減税率を導入することとしています。
今回の税制改正大綱の序文に「産業構造、人々の働き方、家族や地域のあり方等の社会構造が大きく変化している中で、税制の構造に踏み込んだ大胆な見直しを行うことが必要であり、格差の固定化につながらないよう機会の平等や世代間・世代内の公平の実現、簡素な制度の構築といった考え方の下、検討をすすめる」とあります。すでに昨年平成27年より相続税の基礎控除額の引き下げと税率構造の見直しを含めた最高税率の引き上げ、所得税の最高税率も引き上げとなりました。今年平成28年からは給与所得控除の上限引き下げも始まり、資産家や高所得者にとっては増税となっています。格差是正=富裕層への課税強化(増税)を示唆している点は、今後とも注視していく必要があります。
今年の税制改正の柱は、消費税の軽減税率制度の導入のほか、法人実効税率の引下げです。国・地方を通じた法人実効税率(現行32.11%)は、平成30年度までの段階的な引下げを明記し、平成28年度に29.97%と、目標としていた「20%台」を改革2年目にして実現し、さらに平成30年度に29.74%に下げるとしており、アベノミクスが始まる前の約41%からの下げ幅は11%を超えました。
次の動画では、平成28年度税制改正の個別の内容について解説します。
動画URL:https://youtu.be/nKa6yWn-rX0?list=PL4SLxb31faRLxSI3i6kO_YWlkkuYeDY8-