週刊エコノミスト2015年12月1日『相続増税の新常識』号の特集“相続増税の落とし穴”に『「タワーマンション節税」の転機~時価との大幅乖離に課税強化へ』というタイトルで寄稿しました。
「タワーマンション節税」については、こちらの相続対策チャンネル動画でも過去に取り上げていますが、2015年12月時点 の最新状況として、改めて発信します。
2015年10月27日に開催された政府税制調査会の会合において、特別委員の上西税理士が、昨今話題になっているタワーマンションを利用した節税対策について、
「“都心のマンションを買って評価額を圧縮しましょう”というフレーズはいかがなものか?」
「3億円で取得したものを財産評価基本通達通りに評価した結果3分の1の1億円になった場合、これが妥当なのか?」
「通達改正や現在の規定(総則6項)などにより、『時価と評価額のかい離の大きすぎるもの』については、見直して欲しい」
といった発言をきっかけに、国税庁は時価と相続税の評価額のかい離の大きすぎるものに対しては、■財産評価基本通達 総則6項の規定『この通達の定めによって評価する事が著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する』(この規定)を根拠に課税を強化する方針を明らかにし、全国の国税局に指示しました。
エコノミスト誌に「タワーマンション節税には、2つの転機(リスク)がある」と書きました。
①税務リスク
数年前から話題になっていたタワーマンション節税については、2015年7月に「タワーマンションの評価方法がパブリック・コメントにかけられる模様」と報じられ、国税庁での動きがあると言われていました。
そんなさなか、朝日新聞が「タワーマンションを使って6億円を税金ゼロで息子に贈与した節税スキーム」」を大々的に報じ、追って週刊新潮が「相続税と贈与税の合法的脱税マニュアル」という記事を出しました。ついに政府税調での問題提起となり、11月の国税庁方針まで至りました。
政府税調で取り上げられる以前から「いよいよ国税庁による規制が入る」との一部報道が出ていました。弊社の見解としては、当局が行き過ぎた節税策を牽制している・・・程度の見通しでしたが、明確に行き過ぎた節税には、監視を強化するよう全国の国税局に指示する結果となりました。
②マンション価格(家賃)の下落、空室によるリスク
とにかく今の価格は「高過ぎる」のです。
不動産市況は都市部を中心に2013年頃から上昇に転じていますが、マンションの価格については、東日本大震災の復興需要と東京五輪決定による建築費の高騰も加わり、一般の不動産に比べて上昇率が高くなっています。都心部の一棟物の収益不動産(1棟のビルやマンション)についても同様ですが、平成27年以降の「相続税の増税による相続税対策」需要が価格上昇を後押しし、2007年の不動産ミニバブル時に匹敵するほどの活況を呈しています。完全な売り手市場で価格は高値圏です。これはタワーマンションにおいても同じで、アジア系の海外投資家、日本の個人投資家、そして相続税対策として購入する富裕層の積極的な購入により、異次元の価格に突入しました。
高値圏で多額の借入金でタワーマンションを購入する場合、経済環境が深刻な悪化などで高額家賃の物件は家賃の下落や空室のリスクが特に大きくなります。
動画URL:https://youtu.be/0jSO5H9-wKM?list=PL4SLxb31faRICjgteVRC-WIGIeMq5MoCt