2017/11/10

週刊東洋経済10/14号「地価崩壊が来る」特集内執筆「Q&A・相続と土地の問題」

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週刊東洋経済10月14日号「地価崩壊が来る」家を買う前、相続前に知っておきたい土地問題特集内で執筆した記事p54~p56「Q&A・相続と土地の問題」(原文)をアップします(近日中に動画【相続対策チャンネル】もアップします)。

Q1相続税を計算する不動産の価格(相続税評価額)はどうやって決めるのですか?

土地の相続税評価額は、①路線価がある地域の場合は路線価に基づいて算出し(路線価方式)②路線価がない場合は固定資産税評価額に地域ごとに定められた倍率を掛けて算出します。(倍率方式)

路線価方式の場合、毎年7月に国税庁から公表される相続税路線価という各道路に付けられている価格をその土地の面積に掛け、更に各種補正率を加味して評価します。各種の補正とは、例えば土地の形によって行う不整形地補正や接道面からの奥行の長さによる奥行価格補正といったものがあります。土地が正方形や長方形のような整った形状でない場合の価値の低下分を加味するものが前者、土地は一般的に道路から離れて奥に行くほど価値が低くなるため、その低下分を加味するものが後者です。他にも間口が狭い土地の補正や都市計画道路の有無によるものなど多くの補正があります。

そして建物の相続税評価額は、自宅の建物の場合はその家屋の固定資産税評価額がその価格となりますが、他人に貸している家屋(アパートの建物等)の場合は、その地域の借家権割合を控除するため、固定資産税評価額に0.7(一部地域では0.6)を掛けた価格が相続税評価額となります。

Q2土地の価格(相続税評価額)は申告する税理士によって異なることがありますか?

相続税関係の本やインターネットのサイトなどでは税理士によって土地の価格(相続税評価額)が異なるという話を目にすることが多いと思いますが、実はその通りです。

土地は、国税庁から出されている相続税財産評価に関する基本通達(財産評価基本通達)で評価しますが、土地は個別性が強い上、その評価方法も個別判断で異なる場合が多いです。例えば、「その付近にある宅地に比べて著しく高低差のあるもの」や「地盤に甚だしい凹凸のある宅地」は評価が下がる規定などがありますが、著しくとはどの程度か?甚だしいとはどの程度か?明確ではありません。他にも上空に高圧線があったり、埋蔵文化財包蔵地に該当していた場合など、権利関係や法律関係の影響で評価が変わる為、評価する税理士(税理士の力量)によって土地の価格(相続税評価額)が変わる事があります。来年から評価方法が変更になる広大地の評価は、その傾向が強く、納税後に還付請求で払い過ぎた相続税を取り戻す事を専門にしている税理士もいます。

Q3.渋谷区の50坪の古い自宅(時価約2億5000万円)の相続税で悩んでいます?

2015年からの相続税の増税の影響もあり、最近地価の上昇が著しい都心部に広めの自宅を持っているが現預金の少ない方に、自宅を売却しないと相続税が払えないと思っている方が増えているようです。しかし、相続税の課税価格の計算の特例である小規模宅地等の特例が使えれば、過剰に心配する必要はありません。亡くなった方が住んでいた自宅の場合、一定の要件を満たせば330㎡(約100坪)までの土地であれば、20%の評価額になります。

本来土地の時価は公示地価に近いはずですが、最近は地価が高騰している為、時価が2億5000万円(坪500万円)でも相続税評価額は1億5000万円(路線価坪300万円)、時価の60%程度の事があります。そうすると小規模宅地等の特例を使えれば、自宅の土地の評価額は20%の3000万円となり、基礎控除額以下に収まる事になりますので、古い自宅だけなら相続税を気にする必要はありません。但し、正確な評価額は確認しておく必要はあります。

Q4.小規模宅地等の特例とはどのような特例ですか?

亡くなった方が住んでいた自宅や、生活を共にする家族(生計一親族)が事業の為に利用していた土地は、遺族にとってはなくてはならないものです。小規模宅地等の特例とは、そのような財産に多額の相続税が課税されることによって被相続人が亡くなった後の遺族の生活に大きな支障が生じてしまうことを防ぐために設けられている相続税の課税価格の計算の特例です。

相続で、それらの土地を取得した場合、一定の要件を満たせば、一定の面積までは土地の評価額を80%または50%減額することができる為、土地を相続する場合は非常に影響の大きい特例です。

適用要件は、対象地や用途、取得者によって複雑ですが、財産の規模に拘わらず、この小規模宅地等の特例をいかに最大限使うかによって、相続税額が大きく変わってきますので、借金による安易な相続対策を講じる前に、小規模宅地等の特例の活用に詳しい専門家に相談するようにしましょう。

Q5.土地を相続する予定ですが、生前にやっておいた方が良い事はなんですか?

相続税の納税の為に土地を売却する必要があったり、相続人の間で土地を分ける(分筆する)必要があるのであれば、生前、時間に余裕のある内に土地の測量をしておくようにしましょう。近年は、土地を売却する場合、買主から、売主が隣接地との境界に境界標を明示し、隣接地の所有者とその境界を確認した旨の書面(境界承諾書)を添付した測量図を要求されます。もちろん土地の境界に接している隣地の所有者全員の同意(確認印)が必要となりますが、時折、隣接地の所有者との連絡が取れなかったり、その関係などからこの同意(確認印)を得ることが難しかったり、非常に時間がかかったりします。

土地を売却して相続税を納税する場合、相続が発生してからでは間に合わなくなることがありますので、測量は生前にやっておく事が望ましいでしょう。生前に行えば、被相続人の相続財産を減らすことにもなりますので、相続評価の上でもほんの少し有利です。

Q6.父は多くの不動産を持っており相続対策を行いたいのですが、認知症にならないか心配です。

認知症の高齢者は、団塊の世代が75歳以上となる2025年には、最大で730万人に達し、高齢者のおよそ5人に1人が認知症になるとの推計(厚生労働省の研究班調査)です。環境整備も含め各方面で認知症高齢者への対応・対策も急務となっている現在ですが、『相続対策』を考える上でも認知症対策は非常に重要です。

基本的に認知症になってしまうと相続対策はできません。成年後見制度を使っても同じです。そこで近年増えているのが「民事信託」の活用です(図1)。民事信託とは、財産の所有者(例えば親=委託者兼受益者)が、信頼のおける家族(息子など=受託者)に財産を託し、定められた目的に従って財産を管理・処分などができるようにする仕組みです。認知症になる前に、財産の後継者である息子などと信託契約(財産の管理・処分を任せる契約等)を結ぶ事によって、親が認知症になった後でも息子などが親の代わりに相続対策を行う事が可能となります。

Q7.誰も使用していない空き家は生前に売却した方が良いですか?

両親が死没または転居してそのまま空き家になっても、『仏壇があるから人に貸したくない』『思い入れもあり金銭的にも困っていないので手放したくない』などの理由で放置された空き家が増加中です。

『もう少し高く売れるなら売っても良い』と言う方も良く見かけますが、今売れないのなら、いつまで待っても希望の価格で売れることはないでしょう。

誰も使用しておらず、今後も使用又は活用する予定がないのなら、すぐにでも売却する事をお勧めします。特に人口が減少している地方の空き家は、売れるうちに売っておかないといずれ売れなくなってしまいかねません。価値のない不動産は、相続時の遺産分割の際押し付け合いになったり、相続登記が煩わしくなったりして、そのまま放置されてしまう事が既に問題になっていますので、生前に売却しておくことをお勧めします。なお、相続した親の家が空き家になって売却した場合は、譲渡所得から最高3000万円まで控除できる特例があります。

Q8.不動産を相続人が法定相続割合で共有してはいけないのはなぜですか?

父親が亡くなった時などに、遺産分割を簡単に終わらせるためか?不動産を相続人である母親と子供達兄弟で共有にしてしまったケースを時々見かけますが、これは絶対にやってはいけません。例えば、後を継ぐ子供と親が共有しても、親が先に亡くなり子供に相続されれば共有は解消されますので問題になるケースは少ないですが、兄弟間の共有は将来のトラブルの元です。

その時は仲の良かった兄弟でも結婚して子供が出来、親が亡くなった場合、その配偶者と子供が共有者になることもあり、いざ売却しようとする時に意見が合わなかったり、賃貸不動産の場合、修繕のタイミングや費用負担の割合でもめたりする事も多いです。とにかく不動産を兄弟で共有で所有することは絶対に避けるべきです。もし既に兄弟で共有になっている不動産があるのなら、話し合いのできるうちに共有を解消するか、信託契約などを使って問題がおこらないようにしておきましょう。

Q9.土地を相続したので、アパートを建てて有効活用しようと思っていますが注意点を教えて下さい。

アパートなど賃貸不動産から入ってくる収入は“不労所得”と言われるようにサラリーマンにとっても憧れの的です。はじめて土地を相続した場合に、まずアパート経営を考える方が少なくありません。

今は建築会社が企画から建築、入居者の賃貸管理から建物修繕などの建物管理まで全てサブリースでお任せできるので、正に不労所得が実現できるように思うのでしょう。しかし、現実はそんなに甘いものではありません。

首都圏でも2020年以降は人口が減少に転じますが、団塊ジュニア世代が50歳を超える2025年以降は、新規の住宅需要層と言われる20歳~49歳人口は人口の減少スピードをはるかに超える速さで減少していきます。これは人口問題研究所による2015年の首都圏の年齢(5歳)区分別人口構成のグラフですが、このように2040年には20歳~49歳人口は30%以上減少します。この先30年の賃貸市場はこれまでの常識では考えられないくらい厳しく、競争が激しくなるとの前提に立って考える必要があります。サブリースでは家賃下落を防げません。ポイントは立地と家賃下落に耐えられる資金計画(自己資金の多さ)です。

『土地があるからアパートを建てよう』ではなく、『この良い立地でこの資金計画(最低でも半分以上の自己資金)なので家賃が30%下がっても余裕で借入返済できるので建てよう』という発想で考えましょう。

Q10.遺言で兄が自宅を相続、侵害された遺留分を現金で請求できますか?相続人は兄と私の二人です。

相続財産が自宅(不動産)しかないような場合、「遺留分を請求する具体的な方法は、遺留分の相当分(この質問事例の場合、遺留分である自宅の1/4の共有持ち分)についての移転登記を求めることができる。」というのが原則です。逆に言うと、遺留分を請求する権利者は、その遺留分に応じた持分(自宅の4分の1共有持ち分)の移転登記を求めることしかできず、遺留分相当分を現金で払って欲しいという請求はできません。但し、遺留分を請求される側(兄)が、持ち分の登記の移転ではなく、現金で払いたいという意思を表示した場合は、遺留分を請求する側(私)はその時点から初めて現金の請求ができます。

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