2014/08/15

週刊エコノミスト7月29日号掲載『困った!この土地どうする』(後半)

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今回は、前回に続き私が寄稿しました週刊エコノミスト 7月29日「あなたの土地の相続増税」号の、『困った!この土地どうする』の後半の2つの記事(共有地、低収益不動産)の転載と、最終的にページ数の都合で掲載がカットとなった幻の記事(駅から遠い立地)を掲載します。

困ったこの土地どうするP33

ケース4 共有地

 

トラブルの元は早く解消
マンションと等価交換も

一つの不動産を共有することは、親族間であってもトラブルの元になる。親子や祖父母、孫といった直系尊属(※厳密に言うと直系尊属・直系卑属)なら、相続の発生によって共有関係が次第に整理されていくが、兄弟姉妹や夫婦間での共有は避けるべきだ。共有地は活用や売却をしたくとも、他の所有者の合意がなければできず、利害関係でこじれやすい。例えば、兄弟で共有している一軒家に兄一家が住んでいれば、次男が「売却して現金にしたい」と思っていても、兄弟の合意がなければ難しい。夫婦なら離婚する可能性もある。

また長期間にわたって兄弟姉妹の共有の状態が続くと、兄弟姉妹それぞれの配偶者や子ども、孫へと、相続などに伴って権利関係者がどんどん増えていく。互いの関係も疎遠になり、利害を一致させることがより困難になる。共有地の持ち分を売却することもできるが、通常は権利関係の複雑な共有地を購入する人はまずいない。仮に売却できたとしても、金額は相当低くなる。こうした土地の共有は、問題が起きる前にできるだけ早く解消しておくべきだ。

共有地の解消方法は、①共有物の分割、②交換、③譲渡、④贈与――が一般的だ。①は、持ち分に応じて土地を分割すること。②の「交換」は、複数の共有地の持ち分どうしを交換すること。要件を満たせば、不整形地で紹介した「交換特例」も活用できる。③は他者の持ち分を購入すること。④は土地を共有する他者に無償で持ち分を贈与すること。ただ、贈与税の基礎控除(年110万円)を超える分には贈与税がかかる。このほか、共有地の所有者間で合意できるなら、土地を共同で売却して現金化し、持ち分に応じて分ける場合もある。

土地を有効活用しながら共有を解消するには、共有地に分譲マンションを建設し、持ち分に応じてマンションの部屋を取得する方法もある。共有地をいったん、マンション開発業者(デベロッパー)に譲渡したうえで、デベロッパーの資金でマンションを建設。区分所有者は土地代金に見合う部屋を取得し、開発前の持ち分に応じて分け合う。また、デベロッパーは残りの部屋を分譲し、建設費用を回収する。

土地と区分所有建物を「等価交換」する方式と言え、土地の所有者にマンションの建設資金の負担が発生しない。また、土地の譲渡に所得税がかからない「立体買い換えの特例」を適用できるケースが多い。土地の形状や立地が分譲マンションに適さないなら、デベロッパーに一戸建ての住宅を複数戸、建築してもらい、共有地の持ち分として取得した戸建住宅を賃貸するケースもある。

困ったこの土地どうするP34

ケース5 低収益不動産

 

「リファイニング」で再生
シェアハウスへの転換も

賃貸マンションは年数とともに老朽化し、間取りや設備も時代に合わなくなる。例えば、バブル期に建設されたワンルームマンションは1室15平方㍍のユニットバスタイプが多かったが、現在は20平方㍍以上が一般的で、バス・トイレ別の部屋が好まれる。その結果、家賃水準が低下したり空室率が上昇したりし、低収益化に悩む不動産オーナーは少なくない。資金を借り入れて収益物件を建てた場合、当初見込んだ収支計画を下回り、他に所有する物件の収益で赤字を穴埋めしていることも多い。

こうした低収益物件は、内外装を一新する「リフォーム」や用途・機能を変更する「リノベーション」が必要となる場合が多い。ただ、まとまった資金が必要になるうえ、特に借り入れ資金の返済が残っている場合は、リフォームやリノベーション後の収支計画をより厳密に立てる必要がある。さらに問題なのは、建物自体が耐震性に問題を抱えている場合だ。リフォームやリノベーションでは対応できず、建て替えではさらに多額の資金がかかる。

このような場合、既存建物の構造部分を残したうえで、耐震補強して再生する「リファイニング」という方法がある。新築に比べてコストは6~7割で済み、工期も半分以下しかかからない。もともと空室だった部分をリファイニング後、分譲マンションとして売却すれば、新築マンションよりも安い価格で販売でき、リファイニング資金の一部も回収できる。また、現在の建築基準法に沿って建て直せば、高さ制限などから現状より小さな建物になってしまう問題も解決できる。

土地オーナーの中には、企業の独身寮を建てて活用していた人もいる。しかし、企業との契約満了などによって、1棟が丸ごと空いてしまったケースの相談もあった。そこで提案したのが、共有スペースで住民同士が交流できる「シェアハウス」への転換だ。独身寮からの改修には他の用途変更と比べるとコストがかからず、シェアハウス専門の運営業者もいる。シェアハウスはワンルームマンションやアパートより賃料が安いため、最近は大学生や外国人に人気が高い。


ケース6 駅から遠い立地

 

マンションは「駅から5分」
賃貸医院や戸建てで活用

これまで土地活用といえば、賃貸マンションやアパートが一般的だった。しかし、日本は今後、人口減少が進み、立地に劣る物件は競争力を失っていく。これから賃貸マンションやアパートを建てる際の立地は、借りる側の事情も踏まえて厳しく判断すれば、駅から徒歩5分の圏内が一つの目安となるだろう。駅から遠く離れているなど、立地の悪い場所に賃貸マンションやアパートを建ててしまえば、収益が悪化した後に売却しようとしても、安値でしか処分できなくなってしまう。

ただ、駅から離れている住宅地でも、時代のニーズに合わせた活用法はさまざまある。その一つが、開業医への賃貸医院の提供だ。住宅地であれば一定の診療ニーズがあり、近隣に競合する診療科目がなければ、成立する可能性が高い。病院経営コンサルタント会社などは、地域の人口動態や立地条件、競合する医院の状況などを分析する「診療圏調査」を実施している。調剤薬局との共同店舗としたり、複数の診療科目の開業医を集められれば、医療モールとしても展開できる。

駅から30分圏内なら、戸建て賃貸とする方法もある。必ずしも電車で通勤する人ばかりとは限らず、駐車場を2台分確保するなどして多様な借り主に対応すれば、一定の需要を見込むことはできる。1軒当たり100平方㍍程度の広さが必要で、300平方㍍の土地があっても3軒しか建てられないという制約はある。ただ、建築費用はマンションほどかからず、家賃収入でもマンションより高い利回りが期待できるケースが多い。

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