生命保険を代償分割に利用する方法について、解説させていただきます。相続財産が自宅だけといった場合や、相続財産のほとんどが不動産(自宅兼店舗や農地)であるという場合、相続人の間で公平に財産を分け合うには売却してお金で分けるしかありません。しかし、例えば長男が自宅に住み続けたい場合や、商売や農業を続けたい場合は遺産分割をすると家に住めなくなったり、事業が継続できなくなったりします。そういう場合、遺産分割がなかなかまとまらず、相続人間で相続が争う「争族」になってしまう事もあります。
このような場合、代償分割という方法を利用する事があります。
不動産を一人の相続人が取得する代わりに、他の相続人には相当の金銭(代償金)を支払って、相続人間のバランスをとるという方法です。代償分割に生命保険を利用すると言うのは、その代償金の支払いのための資金を生命保険で準備しておくやり方です。
この場合、被相続人が被保険者兼契約者で、不動産を取得する相続人を死亡保険金受取人に指定した生命保険に加入しておくことにより、受け取った保険金を他の相続人に代償金として支払うことができるようになります。
長男に事業を継がせる為に、長男に自宅や事業用の不動産など、多くの財産を引く継がせたい場合には、遺言書で他の相続人には、長男から代償金を支払うようにしておく事で、後継者である長男に多くの財産を相続させる事がやりやすくなります。
死亡保険の受取人を長男にした生命保険に加入しておく事で、死亡保険金は受取人(長男)固有の財産となるため、遺産分割協議対象の財産にはなりません。また、相続人の間で著しい不公平が生じる場合以外、生命保険金は特別受益にあたらない為、代償金として有効に活用できます。
逆に長男以外の相続人(たとえば長女)を死亡保険金の受取人にしてしまうと、長男からの代償金にはならず長女が死亡保険金をもらったうえで、長男に代償金やそれ以外の遺産分けを別途求めることができてしまいますので注意して下さい。
その他の注意点としては、生命保険を代償分割に利用する事で争い防止につながる利点がある一方、保険料は高額になりがちです。どこまでが適正な範囲か?生命保険による方法だけにこだわらず、トータル的なメリットとデメリットを慎重に見極めることが必要になります。
動画URL:https://youtu.be/ntpkxZCmDZA?list=PL4SLxb31faRKA9ux4FuSh5DNLyTsefD9j