2017/05/18

【相続対策の失敗事例】遺産分割で先々を考えていない(後編)【相続対策ch】失敗成功事例#8

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失敗事例の紹介です。

失敗事例1
「一次相続で安易に母に財産を相続させすぎて、結果的に相続税が多くなってしまった」
わかりやすい例で説明します。
相続税の制度の中に、配偶者だけに認められる通称「配偶者の税額の軽減」があります。これは、配偶者が今後生活していく上で必要となる生活資金や、夫婦の協力による財産である点を考慮して、残された配偶者の税負担を減らせるものです。この特例で1億6000万円または配偶者の法定相続分(遺産の2分の1)の財産額のうち、どちらか高い方までが非課税となります。

相続財産の基礎控除前の課税価格が1億6000万円、家族構成は、父・母・子供2名の場合の相続の仕方による相続税額の比較すると、

一次相続で母親が全ての財産を相続した場合:一次相続税はゼロになりますが、そのままの財産額で二次相続を迎えた場合、二次相続税額は2,140万円
法定相続割合通りに相続をした場合:一次相続税額が860万円、二次相続税額が470万円となり合計では1330万円

法定相続割合通りに相続した方がトータルの相続税額は少なくなります。もう少し大きな財産の額=10億円の場合でみると、

母が50%以上取得:一次相続時の相続税はかわりませんが、母が50%を超えて財産を相続すると母の財産が増え、二次相続時の相続税が増える。
母が20%~30%程度取得:一次、二次の相続税の合計額は母が50%の時の相続税の合計額よりも1200万円程度少ない。

配偶者に固有の(相続で引き継ぐ財産以外の、もともと持っている)財産がある場合、より顕著に影響します。

このように、一次相続時の母と子の相続割合の最適配分は、「配偶者が50%取得すること」が最適配分とは限りません。「一次、二次相続税合計の比較」が重要です。今後、相続税は増税の方向ですので、母に多くの財産を相続させると将来の相続税額の負担が増え、注意が必要です。

失敗事例2
「一次相続で長男に収益不動産を集めすぎ、長男と不仲で母が収入不足となり生活も困窮に」
地主さんなど資産家の遺産分割の場合、収益の生む不動産は子供に多く相続させるケースが多々あります。母に収益を集中させすぎると相続財産が増加した分だけ相続税も増えるからです。とはいえ、この事例のように一次相続で長男に収益不動産を集め過ぎると、相続後、長男と母親が不仲になって母親が収入不足となり生活に困窮してしまう事態も起こりかねません。

失敗事例3
「一次相続で生産緑地の納税猶予を長男で受けてしまい、長男は終身営農義務で将来不安」
農家特有の事例ですが、生産緑地の納税猶予を受けてしまうと終身営農の義務を課せられ、途中で農業をやめた場合、猶予されていた相続税とそれまでの利子税も納めることになります。相続人である子が納税猶予を受ける場合、その子供(孫)が農業を継がないケースや、万が一、農地を相続した長男が病気などで農業ができなくなった場合、納税猶予を受けられなくなります。
納税猶予制度を十分理解せず、目先の相続税を大幅に減らせるからと後継者もいない状況で納税猶予を受けた結果、将来不安に陥ったという事例です。

動画URL:https://youtu.be/_xMowRQ9Vyg?list=PL4SLxb31faRI5SraOEZ4BycpGMjKA_GQp

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