2014/07/26

事業用資産の買い換え特例にどこまでこだわるべきか・・・(その3)

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前回 vol.2 の続きですが、前回からかなり時間が経ってしまいましたので、まずは前回のおさらいです(前提条件は前回のブログを参照下さい)。事業用資産の買い換え特例を使った場合の最大のメリットは、80%について課税が繰り延べされますので、前出の例の場合、土地を売却した時点では、譲渡税は4%(譲渡税20%の内80%(16%)が繰り延べられるので)支払うだけで済むことです。反対にデメリットは、建物の減価償却対象額が少なくなり経費が減り、結果として所得税(個人の場合)が高くなる。

前回、簡易的に計算した結果では、買換え特例を使った場合は、譲渡税が 7,280万円 安くなるが、減価償却額(取得費)が少なくなることにより、税率(所得税・住民税合計)40%の場合では、税負担が7,600万円増える。

所得税率にもよりますが、簡単に言うと、譲渡税を一括で払うか、所得税として数年に分けて払うかの違いのようなものですが、この例では一括(譲渡税)の場合20%の税負担、数年に分けて払う(所得税・住民税)の場合40%で計算していますので、単純に比較すれば一括(譲渡税20%)の方が税負担が少なくなる事になりますとまとめました。図でまとめると、こんな感じです。

 

 

★所得税が最高税率(平成27年以降、住民税・復興税合わせると約56%、更に事業税がかかる場合は更に税負担UP)の方の場合は、
更に、買換えた不動産を売却した時に発生する譲渡税を考慮(買い換えた不動産を所有し続ける場合は関係ありませんが・・・)するともっと差が出ます。

土地部分だけで比較(計算の前提条件は前回記載と同じで簡易計算)をしても、

買換え特例を使って買った土地(2.5億円)を 2億円で売却した場合値下がりした場合でも
購入した土地部分 2億5000万円 の取得費は
250,000,000×0.2 + 250,000,000×0.8×0.05 = 60,000,000円
長期譲渡(20%で計算)の場合、譲渡税は
( 200,000,000 - 60,000,000 )× 0.2 = 28,000,000円

譲渡税が2,800万円となります。

 

買換え特定を使わなかった土地(2.5億円)を 2億円で売却した場合

購入した土地部分 2億5000万円 の取得費は
そのままなので売却益は発生しませんので、当然譲渡税も発生しません。

単純な計算では、ここでも買換え特例を使った場合の方が、税負担が2800万円多くなります。更に買換え特例を使って、譲渡税の一部を繰り延べれば、上記の数字にはなりませんが、そこまでの計算は面倒なので省略させていただきます。ここまで書くと、断然買換え特例を使わない方がよさそうな結果となりますが、まだ解説していない買換え特例を使ったメリットとしては、

最初の譲渡税が少なくなるので、先の例であれば、7000万円ほど手元に残るお金が増えるので、7000万円借入が減る又は、7000万円高い物件が購入できる(7000万円分運用が増える)と言う事になります。単純計算では、収益物件のNET利回りが4%とすれば、年間280万円税引前の収入が増えます。

10年間で2800万円、20年間で5600万円、50%の税引き後だと、年間140万円、10年間で1400万円、20年間で2800万円手残り金額が増える事になります(借入の場合は異なります)。厳密には、個別の事例において試算してみないと明確な事は言えませんが、個人的な見解(まとめ)としては、

無理(買い換えを優先して物件選びを妥協)をしてまで、事業用資産の買い換え特例にこだわる必要はないと考えています。明らかに買換え特例を使った場合の方が税負担が増えます。

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