遺言のすすめ

相続対策は誰が考えるべきなのでしょうか?
そして、何が最も重要なのでしょうか?

本当は、家族(被相続人と相続人)で考えるのが理想的なのでしょうが、一般的には財産を残される方(被相続人になる可能性の高い方)が主体となって考えおられると思います。後を継がれる方(推定相続人)が、相続対策について必要性を感じていても、親の死を前提とした相続の話は、子供の方からは言い出せないケースが多いと思います。

相続対策の三原則とは、

①相続税対策(相続税をできるだけ少なくする)
②納税資金対策(相続が発生しても納税で困る事のないよう納税資金を確保する)
③争族対策(相続争いを防ぐ)

の事であり、どれも重要な対策である事は間違いありません。

しかしながら、いくら①の相続税対策と②の納税資金対策を完璧にやったとしても、その残された財産を巡って、相続人が骨肉の争いを行うようになってしまえば、財産だけでなく、血の繋がった肉親の関係でさえ無くしてしまいます。

そう言う意味から言っても、相続対策は、「争族対策」が最重要課題で、次に「納税資金対策」があり、併せて「相続税対策」も行うのが良いと私は考えています。

遺産争いを防ぐためには、遺言書の作成による対策が大変効果的です。遺産分割をしやすいように生前から財産を分割したり換金しておく事も有効ですが、なによりもまず遺言書を書いておく事をお勧めします。

「財産もそんなにないから遺言書は必要ない」とお考えではありませんか?「子供達は仲がいいから遺言書は必要ない」「うちの家族にかぎって」こう思われるかたも多いことでしょう。また息子(娘)達も何も言ってこないので大丈夫(心配ない)だろうとお考えになっているとすれば、それは「言えない」だけであって、決してそうではありません。やはり、財産を残していく人が、相続対策を真剣に考え、まず遺言書を作成する事をおすすめします。

増加する「争族」と「遺言」

平成13年度の全国の家庭裁判所における相続に関する相談件数は、10年前の六割増の約90,600件となりました。昔?は、日本的慣習(家督相続)・家族間の絆・個人の良識などに支えられて、遺言がなくても、互譲の精神によって平穏に相続が行われることが期待できました。しかし、今日の社会事情や個人意識の変化によって、これまで穏便に収まってきた相続が、家族間の絆を裁ち切り、遺産を巡る骨肉の争いへと変わり、悲しいかな家庭裁判所に持ち込まれる遺産分割事件は前述のとおり増加の一途をたどっています。

そんな背景もあってか、「遺産分割のトラブルを最小限に防止でき、自分の意思が最優先される」として、いま遺言の作成をなされる方が増え、公正証書による遺言作成については、近年著しく増加し昭和50年頃までは年間2万件以下だったものが、平成9年に5万件を突破し、平成14年には6万5千件近くに達しました。

法定相続と異なる遺産分割を考えられているとすれば、遺言の作成なしに遺産分割をスムーズに行うことは大変難しいでしょう。法定相続分での分割ですらまとまらない事も少なくはありません。 遺産を巡る骨肉の争いは、財産の多寡にかかわらず、醜いばかりにすさまじく激しいものがあります。被相続人が生存中は仲の良い家族であっても、相続が開始するや予想外の争いが頻発しているのが現実です。せっかく苦労して家族のために財産を築いても、これでは浮かばれません。生涯にわたってご自身で築き上げられた財産や、先祖代々受け継いでこられた財産を、ご自分の意思どおり次の世代に伝え、また残していく家族の幸せを願うのであれば、今すぐにでも遺言書の作成にとりかかりましょう。

※但し最近、遺言書を作成する人が増えているものの、不当な遺言や、欠点があるため、無効となってしまうものが多いため、遺言をめぐる相続争いも増加しています。
遺言書の作成ルールを守って、人生最後の意思「遺言」を失敗のないようにして下さい。

■遺言書作成のメリット

・自分の意思をあきらかにできる。
・遺産分割において故人の意思があるのでトラブルを少なくできる。
・遺言執行人を選んでおけばスムーズな相続ができる。
・財産のわけかたを工夫すれば、相続による財産の減少を押さえられる。
・長男に事業をつがせたいといった一子相続に有効である
・法定相続人以外(お世話になった人)にも遺贈といったかたちで、財産を贈与できる。
・認知等の身分関係もできる。
・遺産分割協議書を作成する必要がなくなる。(遺留分等の争いのない場合)

■こんなとき「遺言」はより効果を発揮する

①遺産の種類や数が多いとき
相続人にとって誰が何を取得するのか、これが遺産分割協議最大の問題点です。あらかじめ指定しておく事で、相続人の負担を軽減することができます。

②法定相続分と異なる割合で、相続させたいとき
推定相続人各人の生活力、年齢等を考え、遺留分を考慮の上、自由に指定できます。

③推定相続人が配偶者・兄弟姉妹、配偶者・親で、配偶者に多くの財産を残したいとき
推定相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合において、配偶者に遺産の100%を残したい時に遺言は非常に有効です。また、配偶者と親の場合では、遺留分との兼ね合いから100%
とはいかないまでも、より多くの財産を残すことが可能です。

④配偶者と兄弟姉妹しか相続人がいないとき
被相続人に子供、直系尊属がいないときは、兄弟姉妹が法定相続人になります。しかし、配偶者と義理の兄弟姉妹の間での話し合いは難しいものです。遺言により、配偶者にすべて相続させられます。(兄弟姉妹には遺留分がありません。)

⑤自営業、農業を営んでいるとき
後継者の指定、資産の細分化防止に役立ちます。農家の場合の田畑や、個人事業主の店舗などの資産は分割すると、困ってしまいます。

⑥推定相続人以外の人へ財産を与えたいとき
次のような場合、必ず遺言は必要になります。内縁の配偶者や面倒をみてもらった息子の嫁などに、財産を与えたいときなどです。
・内縁の配偶者、事実上の養子、後順位の相続人、息子の嫁
・看病してくれた人や施設
・公共施設への寄付などへの遺贈。

⑦その他、相続を円滑に進める指針とするとき
・先妻と後妻のそれぞれに子供がいるとき
・身寄りのない未婚者
・内縁の配偶者との間に子供がいる
・推定相続人の中に行方不明者がいる
・推定相続人同士の仲が悪い

□相続対策の基本的な考え方
「争族対策」としての“遺言のすすめ”がご理解いただけたら、次は「納税資金対策」と「相続税対策」についてお話したいと思います。

■相続対策は、まず財産の棚卸しから

相続対策は、財産を残される方の「思い」を実現し、残された家族の幸せにも繋がるものでなければなりません。そのためには、その「思い」が何なのか、どうしたいのかを明確にしていく必要があります。例えば、自身の今後の生活をどう過ごすのか、具体的に財産をどのように承継させたいと考えているのか、税金対策、納税資金対策を行うためのリスクやコストについてはどのように考えているのか等が明確になっていないと対策は進みません。場当たり的なものではなく相続対策の全体設計が不可欠です。

そのためのは、まず現状を正しく把握することから始める必要があります。すなわち、財産の棚卸しを行うことです。財産の棚卸しを行う事により、現在の財産の相続税評価額と時価を知り、個々の資産がどのように活用されているのか(個々の資産の収益性の確認)、相続が発生した場合の相続税はいくらか、納税資金は大丈夫か、不足するならばどのくらい足りないのかなどの現状をしっかりと認識する必要があります。

■税金対策よりも納税資金対策

税金対策は毎年税法改正が行われることから、現在効果的な対策も法改正によりその効果も大きく減殺されることが予想されます(過去にそのような例はいくつもあります)。
相続税は相続が発生した時の税制を適用することになりますので、税金対策重視型になると税制改正のリスクをこうむる危険性が高くなります。そんなことからも、やはり相続対策は、税金対策よりも納税資金対策を中心に実行し、結果として税金対策にも効果があったとするような取組み方が望ましい姿と言えます。

私の会社、株式会社青山財産ネットワークスでは、収入増を最大のテーマとする,課税資産に対して10%の収入確保を目標とした「10(イチマル)コンサルティング」を提案し、相続対策に大きな成果を上げています。