不動産を所有する会社を買い取る
バブル時、財テクとして都心に3階建てマンションを購入した会社が、本業の美術品販売業が悪化してしまった。マンションは満室だが、高額で購入したため賃料収入だけでは利回りが悪く、不動産事業だけを分離することもできない。オーナー経営者は社長一人の個人会社なので、借金をしないうちに廃業を考えている。
オーナー経営者は会社の存続より老後資金を確保したいけれど、損切りになることは確かなので、できるだけ高値でマンションを売却し、会社を清算したいと思いました。
そこでオーナー経営者は、この会社の全株式を投資家に譲渡します。つまり、投資家が新しい経営者になるわけです。投資家がマンションを購入すると、登録免許税(一般に固定資産税評価額の5%)と不動産取得税(同4%)が課税されます。このため、課税分だけ値引きされることがあります。ところが、投資家が不動産を保有する会社を、会社ごと買う(株式を買い取る)と不動産取得に係わる課税がありません。つまり、不動産そのものの売買ではないからです。しかし、会社の経営権を握るということは、会社の資産を自由に処分できるので、不動産を取得したことと同じ意味を持ちます。
投資家は会社が無借金であることを確認した上で、オーナー経営者から全株式を3億3000万円で譲ってもらい、経営権を握ります。同時に、すべての取締役は退任してもらい、業績を悪化させている美術品販売部門は閉鎖します。
これによって、不動産事業だけを営む個人会社になります。株式取得額3億3000万円は、マンションの資産価値と、マンションの売買に係わる課税額をお互いが折半して負担する金額から算出されました。売る側は少しでも高く売れ、買う側は安く買えたというわけです。
会社に入ってくるマンションの年間賃料は3000万円、表面利回りは9.09%になります。新しいオーナー経営者は会社から役員報酬として1000万円を受け取ります。この株式は取得額3億3000万円に対し、相続税評価額が8000万円になるので、相続対策にもなります。
この株式売却方式は、廃業する会社が増える中、注目を集めています。
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