これからの土地活用は非常にむずかしい
土地オーナーが所有する土地の有効活用を考えるとき、そこには@収入の確保、A相続税対策、B健全な資産を次代に受け継がせたい、といった思いがあります。一方、地元の不動産業者や金融機関をはじめ、ゼネコンや住宅メーカーの営業担当者が次々に訪れ、口をそろえて「あなたの土地を有効活用しましょう。現金収入があるだけでなく、相続税対策になります」と賃貸物件の建設を勧めます。
その説明は理論整然として説得力があり、高い利回りや収益額が示され、さらに相続効果を持ち出されると、多くの土地オーナーは「では、その土地有効活用をやってみるか」と決断してしまうのではないでしょうか。でも、ちょっと待ってください。
本書のタイトルは『あなたの「土地の有効活用」はやめたほうがいい!』です。土地オーナーの皆さんにはショッキングなこととは思いますが、私たちは「いまの時代、一部の極めて優良な立地以外での土地活用は非常にむずかしい」と申し上げたいのです。
なぜなら、すべてにおいて「勝ち組」と「負け組」がはっきりとした時代になってきたからです。所有する土地資産にも有効活用で長期的に安定収入が可能な「勝ち組」とされる土地と、長期的なには有効活用に不向きな「負け組」の土地があるということです。
本書を通じて私たちの根拠、見通しをお知りになれば、きっと納得していただけると思います。その前提にたって、「土地活用はやめたほうがいい」という提案をするのは、時代が大きく変化する中、資産を守るはずの土地活用が資産を失う土地活用になりかねないといえるからです。
本当の意味で資産を守るということ
本書は2003年4月に刊行した「こうしなければ あなたの土地は資産でなくなる」に続く、土地オーナーに対する警告の書です。しかし「あなたが考える土地活用はやめたほうがいい」と、マイナス面だけを強調した内容ではりません。しかし「あなたが考える土地活用はやめたほうがいい」と、マイナス面だけを強調した内容ではありません。土地オーナーは、いまどういう問題意識を持つべきなのかを理解していただき、土地活用の発想を転換する必要があることを訴えたいのです。
市場や時流を無視し、将来の金利変動を考慮せずに、相続税対策だけの土地活用は必ずといっていいほど失敗します。「資産を守る」という意味を考えてください。
私たちが強調したいのは「土地を活用することだけが資産を守ることではない」「利用価値のない土地や建物を所有し続けることが、資産を守ることにはならない」ということです。本当の意味で資産を守るということは、その価値を維持しつづけることです。私たちは「資産の三分割」を提案しています。これは所有する資産について不動産だけでなく、預貯金、証券、保険などの換金可能な流動資産をバランスよく分割する欧米型の資産構成にすることで、経済変動リスクを回避するという考え方です。
「何もしないこと」も賢明な選択
私たちの土地活用の提案は、リスクが少なく確実に収益を上げる土地活用、好条件のテナント探し、資産の組み替えなど、土地オーナーにとって所得対策、相続対策に向けての方法は多岐にわたります。しかし、ケースによっては「いまは土地にかかる税負担など所有コストに耐え、何もしないことがベストの選択です。時代の流れが変わったり、立地条件が変化したとき、改めて土地活用の方法を考えましょう」と提案する場合もあります。
かつて、アパートや賃貸マンション経営は土地さえあれば誰にでもできるといわれてきました。ところが、いまや時代が変わりました。最近、私たちが「その土地に借入金をおこしまで、アパートや賃貸マンションを建てて、本当に大丈夫ですか?ほかの方法を考えてみましょう」と問いかけるケースが非常に多くなりました。ご相談いただいた80%以上の方に「その土地活用はやめましょう」と回答せざるを得ないのが現実です。
「何もしないことがいい」というアドバイスは、資産運用を専門とするコンサルタントとしては考えられないことです。しかし、私たちはご相談者の資産を守るために、安全かつ確実な土地の活用方法が見つからないときは、勇気を持って「その土地活用はやってはいけません」と提案します。
土地活用は「自己責任」
しかし、本書は「何もしないことが資産を守ることになる」という主張をしているだけではありません。いまの時代でも安全かつ確実な土地活用法があることを、合わせてご紹介しております。
土地活用がむずかしい時代だけに、収益を得るには必ずリスクが伴うことをご承知いただきたいのです。土地の有効活用をいままでの時代のように他人に任せっきりの計画ではなく、自分で確認して納得することが必要です。自分で商売を始めるときは、慎重になって当たり前です。そうです、これからの土地活用も「賃貸事業」と考え、その事業計画の目的を明確にすることが大切なのです。土地活用にも、「自己責任」が問われるのです。
本書が、土地オーナーの人たちにとって、何をすべきかを考えるきっかけになるとともに、土地活用を決断する前にもう一度、計画を冷静に再検討して、間違いのない土地活用を導き出していただければ幸いです。