更地を活用、法人名義の賃貸物件を建築
借り入れをせずに収益をあげる物件を建てる
幹線道路沿いに所有する畑はほとんど収益が出ないので、有効活用を考えている。資金の借り入れはぜずに、収益性が高い土地にしたい。
同族会社を設立し、更地に会社名義で賃貸物件を建築し、会社がテナントと20年の建物賃貸借契約を結びます。このとき、建築資金は全額をテナントから保証金として出してもらうことで、資金負担をなくします。したがって、大事なポイントは一番有利な条件のテナントを探すことになります。
このケースでは、15年の保証金(建築費)9000万円、年間賃料3780万円という条件を提示したテナントを選び、さらに、契約期間中にテナント側からの申し出で契約を解除するときは保証金全額を返還しないという契約項目をつけることで、リスクを回避しました。
同族会社は年間賃料3780万円のうち、15年後の保証金返済に充当するため、600万円を積み立て、固定資産税など経費の残り1000万円を役員報酬と給与に充てます。
土地オーナーに収入を集めると高い所得税がかかるので、家族全体としての合計手取り収入を多くするという考え方から、土地オーナーは同族会社から地代だけを受け取り、役員報酬は家族の中で、収入が少ない人が受け取ることにします。
「建築資金全額を保証金で出す」というテナントを見つけたことで、自己資金ゼロで建物を建てることができました。さらに、税務署に無償返還の届け出をすることで、会社と個人間の権利関係に関する課税もクリアします。
会社の売上3780万円に対する税金、諸経費、役員報酬を支払ったあとの実質収入は2200万円になり、オーナーには役員報酬1000万円が残りました。
また、相続税も、ほかの資産も加えて評価額9億円、税額2億5000万円でしたが、貸家建付地にすることで評価減が適用されて合計評価額8億5000万円、税額2億2000万円に軽減されました。
共有名義の土地の有効利用
分筆し、各自の判断で活用できるようにする
10年前、3人兄弟が1つの貸地を1/3づつの共有名義で相続した。これまで、地代も3等分していたが、兄弟の1人に現金化しなければならない事情が起きた。
共有名義の土地は、名義人全員の同意がなければ処分できません。ほかの2人は値下げっているときに、底地権を売却することはないという意見でした。かといって、現金化したい兄弟の共有分を買い取る意思もありませんでした。
したがって、共有地を3分割(分等)しなければなりません。その場合、分割は面積ではなく、土地の価値(評価額)で3等分しなければなりません。端の土地が角地になる場合や、それぞれがいびつな地形になるときは、不動産鑑定士など専門家に依頼して評価の補正をしてもらい、評価額が3等分になるように区分してもらう必要があります。その上で、誰が、どの区分を所有するかは話し合いになります。
共有地分割の場合、譲渡所得税、不動産所得税、は課税されませんが、分筆登記の際、登録免許税がかかります。
このケースでは、それぞれの借地人と交渉して、借地人を所有区分ごとに振り分けました。このとき、現金化したい兄弟が所有する区分の借地人が底地権を買い取る意向があればベストです。逆にいえば、借地人との交渉の過程で、底地権を買い取る意思がある借地人の区分を、その兄弟名義にすればいいのです。
先に兄弟それぞれの所有区分を決めてから、底地権の買取を交渉すると、買い取りたい借地人が別の兄弟の所有区分を借りている、ということもあります。そうなると、「不動産の交換」をしなければなりません。この場合、譲渡所得税はかかりませんが、不動産取得税と登録免許税がかかります。
分筆の大きなメリットは、土地が兄弟単独の所有になり、その後、各自の判断で土地の活用、処分ができるようになることです。
3等分したら、市場価値がなくなるような狭い土地の場合は、1.借地人に底地権を売却する、2.借地権を買い戻して土地を売却する、3.底地権を第三者に売却する、4.底地権と借地権を一緒に売却する、などの方法があります。広い貸し地であれば、借地権割合と底地権割合を交換して、それぞれが所有権を持つやり方もあります。