事業用資産の買い替え特例を利用
事業用資産の買い替え特例を利用
D氏の家系は地元の大地主で、D氏自身も20億円の資産を持っているが、その多くが分散した貸し地になっている。しかも、地代だけでは収益性が悪いため、収益性が高い不動産への組み換えを考えていた。
私たちはD氏に次のような提案をしました。
1.事業用資産の買い換え特例を利用し、底地権を売却して東京都心の賃貸用ビルの土地を取得する。
2.同族会社を設立して、会社が金融機関から融資を受けてビル(建物)を取得する。
3.同族会社とD氏との間で「土地賃貸借契約」を結び、税務署に「無償返還に関する届出書」を提供する。
これらの提案は、
1.不良資産ともいえる貸し地を整理するだけでなく、優良資産に組み換えることができる。2.事業用資産の買い換え特例によって、底地を売却したことによる譲渡益の80%が繰り延べになり、譲渡益課税が軽減される。
3.新たに取得した都心ビルの土地は、税務署に「無償返還に関する届出書」を提出することによって、土地の相続税評価額が20%減になる。
4.D氏は同族会社から固定資産税の2-3倍の地代が受け取れる。同時に資産の分散が図れるので、相続対策になる。
5.同族会社はビルの家賃収入から利益を積み立て、相続発生時にビルの土地を買い取ることで、相続対策になる。
といった目的があります。
手順としては、D氏は1億7000万円の融資を受けて、ビルの土地部分を購入し、自分が設立した同族会社が7000万円の融資を受けて、ビルの建物部分を取得します。その後、D氏は貸し地の底地権を売却して得た1億7000万円の中から融資を返済しました。
1.事業用資産の買い換え特例を利用することで、譲渡益に対する課税は840万円で済みました。
2.相続税は5300万円軽減できました。
3.D氏はビルの地代として同族会社から年間600万円を受け取り、ほかの収入との合算でで確定申告した結果、所得税と住民税の課税率が50%なので、ネットで300万円が残ります。
4.同族会社は家賃収入から経費を差し引いても、年間1000万円が内部留保できる見通しが立ちました。
5.10年後には、同族法人に1億円、D氏に3000万円の現金が残り、将来の相続税資金に充当することができます。
納税予定地の活用で収益を上げる
都心物件の購入で収益アップと相続税削減を実現
地方の資産家が相続税対策として、1.遺産の分割、2.納税対策、3.節税対策を考えている。遺産の分割は養子縁組によって、納税対策は納税予定地を確保したが、納税予定地から収益を上げたい。
活用の対象不動産は斡旋道路沿いの1100坪にある土地(時価4億円、現在は駐車場と資材置き場、年間収入450万円)でした。そこで、1.マンション経営、2.ロードサイト店舗、3.都心物件への資産組み替えの3つの方法について、利回りと相続税効果を比較検討してみることにしました。
1.マンション経営
述べ床面積880坪(44戸)のマンションを建設します。坪当たり建設コストを50万円として建築費は4億4000万円、総投資額は8億4000万円になります。これに対して期待される家賃の年間収入は3200万円(一戸当たり72,000円/月、入居率85%)で、投資総額に対する表面利回りは3.8%です。市場調査では「近郊のマンション、アパートの空室率、利回り実績を調べると、リスクが大きい」という結果でした。
2.ロードサイド店舗
立地条件には問題がないので外食、ドラッグストア、ホームセンターなど15社に出店の意思の有無を打診した結果、7社から「検討する」という回答がありました。
駐車場スペースを考慮すると、建坪600坪規模の店舗が適当で、建築費は3億円(坪当たり建築コスト50万円)になり、総投資額は7億円。600坪規模の店舗の賃料は最高で月額250万円ですから、年間収入は3000万円になり、利回りは4.3%です。
市場調査の結果は、1.商圏が3万人程度しかなく人口流入も鈍い、2.人や車の動線が、この土地に向かっていない、という消極的なものでした。
3.資産の組み替え
土地を売却して都心の不動産を購入する方法です。土地価格4億円に対して、譲渡所得税(事業用資産の買い換え特例を適用)が3500万円、売却・購入諸経費が4000万円かかるので、手取り額は3億2500万円。この資金で都心のビルを購入します。
駐車場と資材置き場のときは年間収入600万円、手取り収入は450万円でした。ビルからの年間賃料収入は2050万円で、諸経費が750万円かかりますが、手取額は1300万円に増え、投資額3億2500万円に対する利回りは6.3%、実質利回りでも4.0%になります。しかも、更地が貸家付建付地になったので、相続税削減効果も6400万円あります。
検討の結果、3.の資産の組み換えが、もっとも高い利回りをもたらすということがわかりました。