地価に押し寄せる3つの大波
デフレ経済の象徴ともいえる地価の下落は、ますます深刻化しています。路線価が10年連続で引き下げられているように、不動産価格の下げ止まり感はありません。
今後の地価を展望したとき、地価を引き上げる要因は見当たらないのが現状です。というよりも、地価を展望したとき、地価をさらに引き下げる大きな動きがはじまろうとしています。
一つは東京都心でオフィスが大量に供給される「二〇〇三年問題」です。オフィスの賃料の値下げにより、オフィスビルへの投資がむずかしくなり、不動産投資に新しい考え方が必要になります。もう一つは、二〇〇五年から導入がスタートする「減損会計」です。この会計制度導入によって企業が不採算資産を処分する動きが活発化し、企業が所有する不動産が大量に不動産市場に流れ込もうとしています。
そして、少子化減少の当然の結果として起こる「人口減少」です。日本の人口は二〇〇六年をピークに減少に転じます。このことは、不動産の過剰供給をもたらします。
これら三つの大波が不動産市場を襲い、地価の低迷は一時的なものでは収まりそうにありません。「日本では、もう地価があがることはない」と考えた方がいいかもしれません。
決断の遅れは資産を目減りさせる
このように、不動産の供給過剰は当面というよりも、今後、一貫して続く現象と考えた方がいいでしょう。もはや「土地の値上がりは期待できない」といっても過言ではありません。
土地価格が右肩上がりで値上がりしていた時代は、土地をもっている企業や個人は、あえて、不動産活用の決断をしなくてもよかったし、非難されることもありませんでした。不動産活用の決断を誤って資産価格を減らすより、何も決断しない方がいい、ともいえる時代でした。たとえ、不動産をめぐる問題解決のための対処方法や決断が遅れたとしても、決断に至るまでに、不動産の価値の(地価)が上がっているので、楽に解決方法を見つけることができました。
ところが、いまのようにデフレ経済によって土地価格が下落を続け、今後も値上がりが見込めない時代は、問題解決のための決断が遅れることは、致命的です。
時間の経過とともに、土地の資産価値はどんどん目減りして、問題解決のための立案は幅が狭まり、再生のチャンスが少なくなってしまいます。所有する土地を売って、五年十年待てば、売却して手にした代金より安い価値で買い戻すこともあり得るのです。いまは、そういう時代なのです。
資産価値の下落が続くときは、解決を先送りにしてはいけません。不動産をめぐる問題が起きたとき、あるいは不動産投資を考えたときは、専門家を交えて早急に確実な計画を立て、計画に納得できれば、すぐ実行に移すことです。まさに「時は金なり」なのです。